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Note

制作ノート(2020年1月) 

 2 年次前期までに、脚本、キャラクターデザインや絵コンテなど、作品の準備作業を完了した。その後8 ⽉から、翌年1月まで、6 ヶ月をかけて本番の制作を完成した。カット数126 、背景画75 枚、 作品の長さは8 分40 秒となった。

 制作中には、作業の多さに滅入ることもあったが、最後まで頑張り続けられて良かったと思う。 制作ノートとして以下のとおり1.背景、2.作画と色ぬり、3.3DCG、4.撮影、5.⾳楽6.スケジュール管理、7.政策を終えて、の7項目ついて記す。

 

1.背景

 絵コンテを完了し、すべてのカットのレイアウトを決めた後、背景画の制作に入った。研究テーマの趣旨に沿って、「思い出」のパートはアナログ、「現在」のパートはデジタルの二つの技法を使った。「思い出」の暖かさと朦朧感を表現するため、不透明水彩を使い、色が周りに滲んでる質感を出すため、水張りの後、まだ乾かないうちに下塗りをした。それはとても緊張感があり心地よい段階であった。最後の仕上げにパソコンで色を調整したり、細部を修正したりした。「現在」のパートは「思い出」のパートと区別する意味も加えて、すべてデジタルで描いた。主⼈公の心境の変化に合わせ、最初の晴れの朝は、明るい色調で表現。次第にストレスがたまり心を閉ざした時期は雨の日の風景。暗く息詰まる色調へと変化する。

 

2.作画と色塗り

 背景全部描き終えてから、作画の段階に入った。ここでは「思い出」と「現在」の区別を表現するため、線の描き方を変えた。「思い出」パートは淡い色を使った鉛筆線で、線も繋いでなかった。そのために、色塗りも通常の作業とちがう工夫をした。鉛筆線に沿って、⾊を塗るためだけの線を描いて、塗り終わったらその線を消すという作業を⾏った。「現在」パートの線は通常のきちんと繋いだ硬い線で描いた。同じキャラクターでも夜、昼、場⾯の違いによってすこしずつ色の設定を変えた。  キャラクターの作画の際、特に気をつけたのは、髪形、髪の長さや表情などを変えて心境の変化を表現する、ということ。この点はキャラクター設定の段階では考え不足で、本番の作画を進めながら気づいた。出来上がった動画を捨てて、描き直したことも多かった。この経験から、初期の設定がどれだけ重要なのかがよくわかった。

 

3. 3DCG

 3DCG の部分は後輩に手伝ってもらい、⼆人で共同で完成した。門の動き、チラシや空のスピンのシーンで3DCGの効果を活かすことができた。⽔彩画⾵のマテリアルを試してみたが、「現在」パートの背景とうまく合わせないので、門の質感を出すために、新しくマッピングを作った。もう⼀つ工夫したのは3d ソフトで24fpsに書き出したアニメーションを本作の作画(およそ8fps)にあわせると少し違和感が感じられてしまう。そこで、3DCGのフレーム数を減らして、12fpsに調整して合成した。

 

04. 撮影

撮影は基本作画と同じペースで進行していた。アニメーションの最後の段階として、カット繋ぎがスムーズにできているか? いているかいないかの最終確認、全体的な色の調整などを⼯夫した。現実を想像しながら、窓の⾬雨、ガスの火や部屋の埃など、普段気をつけないところもアフターエフェクトで作った。

 

5. 音楽とサウンドエフェクト 今回の大きな挑戦のひとつは、初めてアニメーションの音楽を作ってみたことであった。iPad のアプリを使って、様々の参考を探しながら、画面と主⼈公の⼼境にどうやって合わせるのか、⾃分のイメージと⼀番会う楽器とメロディーはどれなのか、考えながらやってみた。この作品のサウンドエフェクトがシーンの繋がりを含め、大きな役割が果たしているので、音楽は逆に最初わざと弱くした。思い出編の音楽が過去の時間を表現するため、少し遠く聞こえるように、エコーをつけていた。

 

6. スケジュール管理

 基本は⼀人で作っているので、いかに効率的に作業を進めると考えながら、スケジュールを立てた。私の制作研究の核となる背景画は8 月から10 月末まででほぼ完了。およそ1 日2、3 枚のスピードで進めた。 作画の126 カットのうち、7 カットは後輩に手伝ってもらったが、それ以外の作画は11 月から1 月中旬まで、平日の朝9 時から18 時まで、マンガ専攻のパソコンをお借りして制作した。マンガ専攻の教室はその時間帯以外使えないので、作画の作業をその時間帯に集中して、週末と平⽇日の夜は撮影、編集と3DCG の部分の作業をしていた。

 

7.制作を終えて

 この作品を作っていた途中、何回も⼼が折れそうになったことがあった。何より、心細かった。アニメーションは、すぐに成果を出せるものではなくて、⻑い時間をかけて作業をし続けても、なかなか終わりが⾒えなかった。途中で何回も⾃分に問い続けていた。たとえこの作品を作り終わっても、誰も見ないのかもしれない。一体何のためにこの作品を作るの? 何のため、誰のためと言ったら、正直に答えると、自分のためかもしれない。自分が生きている限り、何かを表現したい、何かを伝えたい。作品を作ること⾃体が、ただの⾃⼰満⾜と⾔っても過ぎないが、最後に完成した作品をあらためて見直すと、実際、自分がこの作品に救われていたかもしれない。

 ⾃分は『⾃分の⾔動に他者がどう反応するか』が気になって仕方なく、他者の期待に応えるだけの存在だった。最初は自分が『空気を読める』人間として自信を持っていたが、次第にそれが高じて、いつの間にか本当の自分を無視していた。本当の⾃分を裏切った不安と後悔が日々自分を取り囲む、暗闇の中から自分を救いだしてくれたのは故郷の思い出、家族の愛、希望。製作中の私の心境の経過とこの作品で描きたかったことは同じことだったようだ。

 さまざま反省点はあるものの、今回の作品制作において、特に背景美術の描写に関しては、十分な手応えと制作の喜びを感じることができた。 この体験を糧に自分の可能性を信じて、表現を磨いていきたい。      

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