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※2018年度

SCENARIO

1. 脚本、キャラクターデザインの制作と検討

 はじめに、作品の構想を練りながら、『過去のかけがえのない思い出』を作品のテーマとして、脚本とキャラクターデザインを作った。しかし、実際の絵コンテを描きはじめると、表現したい要素をすべて並べていくと、おそらく約15分超えると予想された。映像の質を落とさように、動画の作画枚数や背景の数、CG、撮影編集の工数をを計算すると、一年間で完成するのは厳しい量である。また、観る側に立って考えても、短編アニメーションの長さとしては、10分以内の尺が理想だと思われ、脚本を調整することにした。

 『A :思い出部分の描写』と『B現在の主人公の心境の描写』の比重を変えて構成し直し、各所にちりばめた『A部分』をいくつのカットに整理し、作品の時間を短く調整することにした。脚本を全部書き直し、新しい脚本にあわせて、キャラクターデザインも全部書き直した。

 現在、脚本第3稿を書き直し中ですが、

 このページの下に第2項全文を掲載しておきます。(※パスワードが必要です。)

 

2.あらすじと象徴的記号の組み立て

 新しい脚本のあらすじは、社会人A子はいつも他人の機嫌を取っているお人好しで、頼まれたら断ることができず、常に本当の自分の考えと気持ちを抑えている。アパートに帰ると、郵便受けに投函される大量のDMやチラシ。どんなに片づけても終わられない。次第にチラシは部屋の中に溜まり積み重なって、A子は自分を部屋に閉ざされてしまう。ついに精神的にも閉じこもってしまったA子、『過去の思い出』と『本当の自分』に救われ、閉ざされた部屋から飛び出す、という話である。

 物語中の出来事や事柄は象徴的な記号として設定し、メッセージを含めているので、その観点から少し詳しく説明すると以下の通りである。

 外からのチラシやパンフレットなどはA子にとって、社会や職場などの世界からのストレスを意味する。A子が住んでいる部屋は自分の心の中だ。部屋と外の繋がりとしての『ドア』はA子の『心の扉』を意味する。外からのチラシ(ストレス)は部屋のドア(心の扉)を通って、部屋(A子の内心)の中を次第に埋めていく。

 電車の揺れでぶつかり、心を込めて謝ったA子に冷たく対応した人(社会)、仕事を全部A子に任しておいて、自分はのんびり時間を過ごしている会社の同僚(職場)、引き受けた他人の仕事を失敗したA子を怒った上司(職場)など、お人好しのA子にとって、日常の人間関係はストレスの源になっている。本当の自分を抑えて、争いを避け、他人の機嫌を取るために努力しているA子はちっとも評価を貰えずに、どんどん潰されていく自分を、部屋の中に閉ざしてしまった。

 足の踏み場もないほど乱雑な部屋の中は真っ暗で、「誰かに救われたい」と渇いているA子が思い出したのは、どんな時でも幼い自分を守ってくれて、支えてくれた家族のことと、小さい頃の夢、希望であった。

 その時、ドアの向こうから靴音が聞こえたまったチラシを片付けている気配がする。郵便受けの隙間から光の筋が漏れている。「もしかして私を救ってくれる誰かが?」とA子は思いながら、ドアの方へ移動していく。そして、ドアの外にいたのは誰でもなく、本当のA子であった。ここからはA子の意識の世界に入るみたい、部屋に鎖されている自分と外にいる本当の自分と一緒にストレスと戦う。そして翌朝、自分を取り戻したA子は、すっきりと片付いた部屋を出て、いつものように会社に向かう。

 『自分を救える人間は自分しかない。心を押し殺してまで社会のご機嫌を伺うことはない。私を作り上げてくれた家族の愛に応え、夢と希望と自分を信じて、勇気を持って生きる。』そういうメッセージをこの脚本に込めた。  

 

3.キャラクター、背景、編集技法を考慮した絵コンテとビデオコンテ

 A子のキャラクターデザインは当初の明るいイメージを暗く調整して、旅をするような服装を社会人OLの服装に描き直した。思い出のお婆ちゃんのイメージを若い時の母(家庭の主婦)に調整した。

 背景デザインで留意したことはA子の心境が変化を表現する部屋の様子の変化。最初の部屋は、きちんと片づけられ、テーブルの上にある鉢植もまだ咲いていた。しだいにチラシとパンフレットが増え、ごみごみした部屋になってきて、鉢植も萎えてくる。その部屋の中の置物(例えば玄関に置いている靴やカーテン、鉢植など)を乱雑に置いたり、全体の色合いをちょっとずつダークブルーに調整したり、部屋の中に入る光の量も少なくした。

 編集で感情や意味をを作り上げる『モンタージュ』技法をとりいれたり、映像の流れやリズムをつくるカットとカットの繋なぎを想定して、絵コンテを制作した。また、この絵コンテの静止画に仮の時間をあて、仮の音声をつけたビデオコンテを制作した。 

 

4. 3DCG

 日常の世界と、引きこもってしまった内面の世界を際立たせるために、3DCGを効果的に使いたいと考えている。二つの世界の出入口である『ドア』を3DCGで試作した。 しかし、現在はまだ満足のいくものができていない。他の手描きの背景美術との一貫性と違和感を両立させるため、モデリング、マッピング、動き、レンダリングなど3DCG上のさまざまな要素を検討する必要がある。 (テストレンダリングはこちら

 

5.来年度

 今期中の作業で、作品の下地固めはほぼできたが、この後はもっと具体的なスケジュールを立て、ロードマップ(工程表)を作り、作品完成にむけて研究と制作を進めていこうと考えている。

制作ノート 

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